【感想】企画展「椅子の神様 宮本茂紀の仕事」

 

「LIXILギャラリー/大阪」で現在開催中の企画展「椅子の神様 宮本茂紀の仕事」に行ってきました。
写真:2019年4月にワイス・ワイスから発表された佐藤卓氏デザインのソファ「SPRING」。自然素材と伝統技術を用いた一生モノの家具がコンセプト。写真は、開発を担当した宮本茂紀さんがつくった最初の試作品。
製作・所蔵:五反田製作所グループ 撮影:尾鷲陽介

今回、LIXILギャラリーがスポットを当てたのは日本で初めて「家具モデラー」として活躍し、カッシーナ、B&B、アルフレックス、隈研吾など一流のメーカーやデザイナー・建築家たちと椅子の試作開発を行ってきた、日本における椅子づくりの第一人者・宮本茂紀さん(1937年 東京生まれ)。

本展は、宮本さんの約65年の長きにわたるキャリアを、「モデラーの仕事」「椅子張り職人の仕事」「次世代を育てる仕事」3つのカテゴリーに分けて紹介したオリジナル企画です。
LIXILギャラリー公式サイトはこちら

ギャラリーには、宮本さんが最近手がけた椅子や、迎賓館や明治村に残された古い椅子の修復の記録など、約35点の資料が展示されています。

写真:竹蒔絵小椅子。W450✕D500✕H880 所蔵:博物館 明治村
宮本さんが明治村から修復を依頼された「竹塗蒔絵小椅子」。鹿鳴館が華族開館になったあとに購入され、戦後は進駐軍によりペンキが塗られたと推察される一脚。

「モデラー」とは、デザイナーのイメージを形にする仕事。デザイナーが描いたイメージを、どのように重量を支えるか、素材はどうするかなど具体的に考え、「試作・開発」を行い、職人たちに作りやすいかたちを考えだす、そんな橋渡しの役割を担います。

 「SPRING」 デザイン:佐藤卓 販売元:株式会社ワイス・ワイス
左側が完成品、右側が試作品。見どころは、タイトルにもなっているスプリング(バネ)。バラバネ(単体で独立しているコイルスプリング)を麻ひもで連結して吊る伝統的な手法で作られていて、現在では宮本さんを含め数人の職人しか扱うことができません。また、張地については害獣問題、引いては日本の森が抱える問題を知ってもらうため、シカ革を使用。シカ革は使える面積が少なく、この1脚だけ約15頭分のシカ革が使われています。


このほか、建築家ザハ・ハディド氏がデザインした椅子や、梅田正徳氏がデザインした桔梗をモチーフにした斬新すぎる椅子などが展示されています。

また、実際に座って、素材による座り心地の違いを体験できるコーナーもあります。

半スケルトン状の椅子は、明治時代~現代に至るまでのクッション構造の変遷を若い職人へ教えるために宮本さんが作ったもの。

左端:1870年頃~【バラバネ✕馬毛/束土手】「SPRING」と同様のバラバネを使用した伝統技術を用いた椅子。馬毛の座面で実際座るとふわふわで座り心地がいい
中央:1950年頃~【連結バネ✕ヤシの葉の繊維✕柴草/土手】バラバネに比べて、連結バネは反発力がこなれるまでに時間がかかる。だが麻テープの風化問題はクリアされる
右端:2000年頃~【エラスベルト✕ウレタンフォーム】現在ほとんどの椅子がこのウレタンフォームタイプとなっており、作業効率は高く座り心地はソフトだが、長年の使用には耐えられない

「無闇に伝統的な技法を賞賛したい訳ではない」という宮本さん。それぞれの長所、短所を理解したうえで、目の前の椅子作りに生かすことができるという思いから作ったそう。
そんな、時代、技術、素材の異なる、3つの椅子の座り比べを楽しめます。

このほか、宮本さんが開発したイージーオーダーチェア「Mychair」や、国内外から集めた200種の樹種を使った「BOSCO」シリーズなどにも、実際に座ることができます。

この「BOSCO」シリーズも、きっかけは、若い木工職人の間で素材への関心が希薄になりつつあることに危機感を抱いたのがはじまり。

パネルの「木取りの見本」は、宮本さんが若い人たちに木の魅力と個性を理解してもらうための加工方法を示しています。
こうした展示資料からも、宮本さんが、技術継承にかなり力を注いでいることが読みとれます。

 

こうして、普段は見ることのできない椅子の中身を覗いてみると、
座り心地の秘密だけじゃなく、生産効率を高めるために、職人の技術や、樹種の多様性が失われてきたことも見えてきます。

そうした文脈のなかで、日本の椅子づくりの歴史をアーカイブでき、若い人と一緒に新たな挑戦ができる、そんな宮本さんの仕事はとても刺激的で見応えがあります。

ぜひ、今では貴重なバラバネ椅子の座り心地や、
憧れの「Mychair」や、樹種によって全く座り心地の異なる「BOSCO」を体験してみてください。

 

宮本さんが手がけた椅子、宮本さんの人柄、対談やインタビューなどを通して、より展示の理解を深めることができる充実のブックレットもおすすめです。

帰りに、同じ南館6階にある「紀伊國屋書店グランフロント大阪店」で購入できます。ネットでも入手可能です、事前に読んでいけばより楽しめるかもしれません。
ブックレット:https://www.livingculture.lixil/publish/864805261/

LIXILギャラリー/大阪
『椅子の神様 宮本茂紀の仕事』(URL:https://osakaschedule.jp/25064
期間:6月7日(金)~8月20日(火)
時間10:00~17:00
料金:入場無料
休館:水曜、8/13~16
会場:LIXILギャラリー/大阪(大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 12階)

LIXILギャラリー/大阪への行き方
ギャラリーの入る「グランフロント大阪南館 タワーA 12階」というのは、
JR大阪駅北側、商業ビルが連なった大商業施設「グランフロント大阪」一番南側のビル上にたつオフィスタワーです。2階が各棟を繋ぐ通路となっていて、南館の2階に「タワーA」の専用入り口があります。そこからまず9階までエレベータであがり、さらに9階で左手のセクションA(11~18階)のエレベータへ乗り換えて12階「1214」号室へ。最初はとてもわかりにくいですが、諦めずに進み続けてください。

★今回も案内してくださったディレクターの髙橋さん、ありがとうございました!

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